崖の淵から、こんにちは。

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迷走中の崖っぷち女です。アフィリ 麦チョコ やっぱり映画

【本当にヤバい時、ヒトは傍観者になる?】新宿駅南口、午後3時

れは、もう20年くらい前のこと。

大学1年生の夏

未だにあの場所に行くと、少しだけ足がすくむ。

私はそんな体験をした。


再開発が始まったばかりの新宿駅南口。

ゴチャゴチャとした駅周辺では

競馬の予想やら酒を酌み交わすおっちゃんが

まだ、チラホラいらっしゃった。そんな頃の話しです。

新宿駅南口、午後3時

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学の友人K子と一緒に新宿駅南口改札』に向かって歩いていた時のこと。

今でいうと ‟Flagsビル” のGAPがある
階段下あたりで
話しに夢中になっていた私は
急に何かに、つまづいた。

「す、すいません」そう言って足元を見てみると、


にゅ~っと伸びた長い脚と、バカでかい足には新品のエアマックス95

それは電話ボックスによりかかってグーグー眠る
大男の足なのでした。


「超ビックリ!」「ウケる~」
三年寝太郎かってーの!」


私たちは何がおかしいんだか、大男の眠る姿に爆笑しながら南口改札に向かう階段をゲラゲラと登っていったのでした。

この後、人生で5本の指に入る、恐ろしい体験をするとも知らずに・・・

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走れ!走れ!走りきれっ!


さて、ちょうど
階段の真ん中あたりまで来たときです。

K子が後ろを見てギョっと目を見開いたまま、
口をパクパクさせてます。

「え?なに?」

振り返ると、先ほどの寝太郎が
ものすごい勢いで、こちらに向かって走ってくるではありませんかっ!


や、や、やばいっ!!

に、に、逃げろっ!!



私たちは必死で階段を駆け上がった。


階段を登りきって後ろを振り返ると

大男は階段を3段飛ばしで

猪突猛進してきています。

は、速いっ!目が血走ってる!


た、た、助けてーー!!


「助けて!助けて!」と叫びながら
甲州街道沿いの歩道を必死になって走った私とK子。

さらなる悲劇がレモンを襲う


ちょうど、南口改札前のあたりに辿り着いた時。

私に、さらなる悲劇が起こりました。
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そう。コケたんです。


見事に『すってーん!』とコケて、
歩道の真ん中に顔を突っ伏してバターンと倒れてしまった私。

あぁ、やってもうた。


一番転んじゃいけない時に転ぶという ‟お約束人生”

なんでいつもこうなるんだ? 


絶体絶命の中、足がすくんで、立ち上がれずに突っ伏していると

『ブゥ~、ブゥ~』と、

聞いたこともない獣の息遣いが、
私の頭上から聞こえてきた。

お、終わった。


雑踏の中から聞こえる
「助けてください!」「誰か助けて!」
と、必死に叫ぶK子の声。


恐る恐る、少しだけ、顔を上げると

私の前には見覚えのある、‟にゅ~っ”と伸びた脚とエアマックス


その先には、私と大男を一定の距離を保って囲んでいる無数の人々の足が見える。

もう、ダメだ。逃げきれない。


ありがとう、お父さん。
ごめんなさい、お母さん。


地面にぶっ倒れている私に向かって寝太郎が

「でめぇ、ごの野郎!!」

と、大声で叫んで

私の胸ぐらをつかもうとした、まさにその時!


なぜか視界に入る全ての動きがスローモーションになったのです。

コマ送りのように一秒一秒がゆっくりと刻まれていく。



私はヤツの大きなの手を思いっきり「バシっ」とチョップし、スクっと立ち上がって彼の足元をするりと横へ抜けると、『シュタタタタン!』と忍者のように低い姿勢のまま、私たちを囲む群衆をすり抜け、駅ビルへと逃げ込んだのでした。


なぜあんな俊敏な動きができたのか。
未だに自分でもわからない。

自分の体が自分のものではなくなる感触を受けたのは、後にも先にもこの時だけです。

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連行されたのは、だれ?


は、必死で駅ビルの雑貨売り場の逃げ込んで

レジのお姉さんに
「助けてください!警察呼んでください!」
と、泣きながらお願いし、
そのままお巡りさんが来るまで
レジの下にかくまってもらったのでした。


の後どれくらい経ったかわかりません。
きっと数分だったのでしょう。
2人のお巡りさんが来てくれました。


あまりにも小さなおじさん二人組だったので、思わず

「本当に大丈夫ですか?」「拳銃用意しといてくださいっ」「見つかったら殺されちゃう」

とビビる私は、2人のお巡りさんの間に挟まれ、
両腕をガッチリつなぎながら、交番に辿り着いたのでした。

はたから見たら、私が連行される犯罪者


番に着くと、
「レモン!!」と飛びついてきたのはK子。

あぁ良かった!無事だったんだ!!

私たちは汗と涙と鼻水にまみれながら、
抱き合ってオイオイ泣き続けたのでした。


しばらくすると、お巡りさんが

「ところで、その顔の怪我は、彼にやられたのですか?」

・・・へ?

鏡を見たら、私の鼻の頭は真っ赤に擦り剝け血がにじんでいます。


こ、コケました。
走って逃げてるとき、コケました。

「押されたの?」とお巡りさん。

いいえ。だから私が勝手に転んだんですよっ。


そんなこんなで

気をつけてね。新宿は色んな人いるから。

とお巡りさんに言われて、被害らしい被害も無いのでもう帰ってね。という話しになり、

兄に交番まで迎えに来てもらい

私たちは無事に、新宿駅南口から脱出することができたのでした。

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あれから時は流れ・・・


新宿南口はどんどん整備され、

バスタ新宿やNewmanなど新しい施設が誕生し

すっかりキレイな駅に変貌した。


同時にあの頃の

きな臭い空気も無くなっていったのだが

私は新宿駅南口に降り立つたびに

あの暑い夏の日の「むわっ」とした

ねばっこい空気と

汗にまみれた人々の息づかいが、よみがえる。


ころで

今でも時々連絡を取り合う私たち。
つい先月も彼女に会った。

待ち合わせは、いつもの新宿駅南口
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お酒を飲むと、私たちはいつもこの時の話しになる。

「私はさ、あの時レモンは確実にヤラレタと思ったんだよ。あの絶体絶命のピンチをどうやって逃げ切ったの?」

そして、私は今でもやっぱり上手く説明できない。


するとこの間、K子が

今みたいに、スマホがあったらどうなってたかなぁ

あの時は携帯すら持っていなかった私とK子。


『即、動画でアップされて拡散されちゃったかもよ?』

『でもさ、あの大ピンチを切り抜けた瞬間の動画は、ちょっと見てみたい気がするよね~』


なんて笑いながらバカなことを話していると、
K子がボソッと言った。

もしスマホがあったら、誰か助けて、くれたかなぁ


そのつぶやきを聞いたとき、

『あぁ彼女も、あの時の息遣いが五感に染みついているんだなぁ』

と、私は思ったのでした。


答えは、やっぱりわからない。
でもこれだけは確かに言える。


ヤバい時には「助けて!」と言っても、助けてもらえない

と思った方がいい。


私だって、助けることはできない。

みんな怖いし、巻き込まれたくない。

良いとか悪いとか、そういう尺では測れない。

だから、自分の身は自分で守るしかない


そして窮地に追い込まれると、人は思わぬ力を発揮するものなのかもしれません。

合気道なら、か弱い私も未知なる力に頼らず戦うことが、できるかなぁ。

え?か弱いって誰のこと?